チリワイン史
チリのワイン法
葡萄品種論
チリの地形
ワイナリーとワインメーカー
その他のチリ情報
チリワイン史
チリはワインがチリは旧大陸を離れて最初に定着した新大陸で、コロンブスのアメリカ大陸発見が大きなきっかけでした。
スペインによる南米各地の植民地化に際し、カトリック教の宣教活動が重要であったため、宣教師たちは南米の太平洋沿岸側を南下しながら活動を行いました。 そして、この布教活動のために必要だった礼拝用のワインを作るために、葡萄の木が持ち込まれ、これがチリの気候や土壌と良くマッチし栽培が広がっていきました。
今から約450年前の1556年に、チリで栽培されたワイン用ブドウの実から作られた、最初のワインが確認されています。ニューワールドと呼ばれるヨーロッパ以外のワイン生産国の中では、チリは最も古くからワインが作られている国です。
(地図:ヨーロッパ各国の植民地支配と、ワイン用葡萄の移植ルート)
1818年にスペインから独立を果たしたチリはその後本格的なワイン作りを開始します。
独立以前にもチリでは宣教師に持ち込まれた葡萄栽培が行われていましたが、本格的なワインを作り始めたのは、シルヴェストーレ・オチャガビアによるフランスからの高級葡萄品種導入以降です。 このオチャガビアはチリ葡萄栽培の父と呼ばれています。
現在もチリで栽培されている、カベルネ・ソービニョン、メルロー、ピノ・ノワール、リースリング、ソービニョンブラン、シャルドネの祖先となるものこの時オチャガビアが持ち込んだ苗木を祖先としています。
スペイン独立から間もない19世紀、チリのワイン作りにおける第一次ルネッサンスとも呼べる革命的な変化が訪れました。
その鍵になったのが、ヨーロッパに壊滅的な被害を与えたフィロキセラの発生です。 フィロキセラは、アブラムシの一種ですが、当時のヨーロッパ系の品種はこのアブラムシに耐性がなかったため、ほぼ全滅という事態に陥ったのです。
壊滅状態の自国で職を失ったヨーロッパの優れた醸造家や栽培家達が、ワインを作る理想の大地を求めて移住してきたのが、何故かフィロキセラに全く犯されなったチリでした。
この時フィロキセラ禍を逃れたことから、それ以前にフランスから導入された苗木が現在も子孫を残しているため、葡萄の木の純粋さという観点からフランスを凌ぐと言われています。
またヨーロッパでは現在もフィロキセラ対策のために台木にアメリカ系の根を使っていますが、チリでは未だにフィロキセラがいないため、自根の葡萄を使ったワイン作りをしている栽培家が多く、貴重な産地と考えられています。またこのことが、チリワインに個性を与えていると考えられています。
1877年 チリワインは初めてヨーロッパに輸出。1889年のパリ博をはじめとするさまざまな品評会で好評を博し、その評判を確かなものとしていきました。
チリのワイン作りは19世紀後半に飛躍的な進歩を遂げましたが、20世紀に入ると長い停滞期に入ります。
主な原因としては、1900年代初頭の酒税の増税や、法律の改正がワイン作りの技術的発展を妨げる方向に進んだためです。
1974年に葡萄栽培を制限する法律が撤廃されると、急激な自由化が増産をまねき、結果として価格の急落を生みます。
この時不況にあえぐ大手ワイナリーは経営再建を図るため、株式会社化や外国資本の参入を受け入れるなど、結果として生き残りをかけたビジネスの再構築がなされました。
新しい生産技術はこの時期に取り込まれ、、発酵用のステンレスタンクや熟成用のフレンチ・オーク樽、点滴灌漑システムなど、世界最新の技術が導入されていきました。
葡萄の栽培技術も著しく向上しました。
チリワインの品質は飛躍的に向上し、「新世界ワイン」の一角として世界中の注目を集めるようになっていったのです。
しかし、1990年代以降、チリワインは海外市場でのシェアを拡大し、日本でも97,98年のカベルネブームで、チリカベのニックネームで親しまれるなど、安くて美味しいチリワインが爆発的に売り上げを伸ばしますが、この時、過剰生産、供給したことにより、結果的に日本市場で値崩れを起こし、その後の日本でのチリワインに対するイメージに影を落としました。
しかし、近年チリの生産者達は、1990年代に多く作られた安価なテーブルワインのみではなく、国際的なワインコンクールで評価されるようなプレミアム・ワインの生産に特に力が入れられています。特に近年、評価が高まってきた原因として、1990年代後半に植えられたプレミアムワイン用の葡萄畑がようやく樹齢が成熟してきた、ということがあげられています。
チリのワイン法
チリにおけるワインの管理機関SAG(Servicio Agricola Y Ganadero=農牧局)
によって、チリのワインは以下の3つのカテゴリーに分類されています。*抜粋
原産地呼称ワイン(DO)
チリ国内で瓶詰め
ラベルに原産地表示する場合は、その地域の該当品種を75% 以上使用
ラベルに葡萄品種を表示するには前記品種が75%
ラベルに補助品種を記入する際にはその補助品種を15%以上使用のこと
比率の多い順に左から右に3種類まで表示できる *A
ビンテージ表示する場合には表示年のワインを75%以上
「生産者元詰」表記は原産地呼称を認められ、かつ次の条件をみたしたもの
A)ボトリングラインと、葡萄を生産したビンヤードがワイナリーの所有する敷地内にあるか、またはワイナリーが所有し、同一原産地呼称地区にあること。
B)ワインの醸造、ボトリング、保管が、自己の施設において、連続した一連の行程として実行されること。
原産地呼称ワインはそのラベルにDenominacion de Origen、または DOと表示しその後に当該地域を記載する ものとする。*B
以下の品質補足表示を記載することができる。(してもしなくてもいい)
Superior :特有かつ独自の風味特性を持つワイン
Reserva : アルコール度数が法定アルコール度数より少なくとも0.5度以上高く、特有かつ独自の風味特性を持ち 樽熟成している場合もあるワイン。
Reserva Especial :レゼルバ Reserva: アルコール度数が法定アルコール度数より少なくとも0.5度以上高く、特有かつ独自の風味特性を持ち、樽熟成しているワイン。
Reserva Privada :アルコール度数が法定アルコール度数より少なくとも1度以上高く、特有かつ独自の風味特性を持ち、樽熟成している場合もあるワイン。
Gran Reserva :アルコール度数が法定アルコール度数より少なくとも1度以上高く、特有かつ独自の風味特性を持ち、樽熟成しているワイン。
原産地呼称のないワイン
国内の各地方で生産され、葡萄品種の指定がある。
表示する葡萄品種はその混合使用において、75%以上でなければならない。
テーブルワイン
食用葡萄から生産
葡萄品種、品質、収穫年表示不可
*補足:
*A この順に記載していないワイナリーもあるのでややこしい。
*B DOについては、フランスのAOCのように狭い原産地呼称の方が高級と言えるけれども、チリの場合は狭い原産地呼称の知名度があまりにも低いため、広い原産地呼称を選んでつけている場合が多い。例:マウレ>ロンコミージャ、だけれども、マウレをつける、など。
*C 樽熟成なし(総じてベースレンジ)、を意味するバラエタルという言葉はワイナリーでは日常的に使われるが、ボトルには記載されない。
*D レセルバは樽熟成してもしている場合もあるワイン、だが、赤の場合は大概樽熟成している。白の場合は、していなくとも、特徴があるワイン、というくらいのもの。総じてミディアムレンジ
品質補足表示はワイナリーが選ぶので、キチンとした基準が見えにくい。
*E プレミアムにはプレミアムとは書いていない。
チリワインには、フランスワインのような明確な格付け制度はありませんが、樽熟成されているか、いないか、葡萄品種が単一か、それとも何種類かのブレンド(アッサンブラーヘ)か、というような情報がラベルに記載されていますので、そこからどのようなワインか読み取ることができます。(記載してもしなくてもいいので、ややこしい。)
ヴァラエタル
ヴァラエタルワインとは、単一の葡萄品種で作られた、また、樽熟成されていないワインのことを基本的に指します。
もっともシンプルなベースのワインです。
ただし、ラベルにはヴァラエタルとは記載されず、葡萄品種だけが記載されていますので、注意が必要です。
2000円以下ぐらいで、レセルバと記載されていない単一品種のワインは、大方ヴァラエタルワインです。
チリでは、各ワイナリーが品種ごとに、別々に瓶詰めして販売しています。したがって、多い場合には10種類以上もの品種のワインを、一つのワイナリーがリリースしています。
レセルバ
レセルバとは、大体の場合で、樽熟成されているということを示しています。
(白では、レセルヴァと書かれているけれども、樽熟成はされていないものもあります。この場合は、、特有かつ独自の風味特性を持つ、という意味でつけられています。)
総じて、ミディアムレンジのワイン、くらいの感じでしょうか。
エチケットには"RESERVA"という文字が記載されています。
チリのレセルバワインは、単一品種だけで造る場合と、複数の品種を混ぜて造る場合があります。 前者の場合は、品種の特長を生かしたものになり、後者は、各ワイナリーがいろいろな品種をそれぞれ独自の割合でブレンドするため生産者の個性を反映するものになります。ブレンドされたワインのことを、アッサンブラーヘといいます。
さらに、レセルバワインには高品質なものに対して、レセルバ・エスペシャル、グラン・レセルバ、レセルバ・リミタダなどと、格上げ名称があります。
そして、最上位クラスはレセルバ等々の記載もされない、そのワイン専用のブランド名が与えられたプレミアムワインになります。
葡萄品種論
チリワインは生産地別の特徴もさることながら、葡萄の品種別の特徴をはっきり表現しています。チリほど多彩な単一品種で造る品種別ワインを作っている国は世界でも多くありません。
なお、世界で作られている葡萄の種類には、名前がつけられているものだけでも5000種以上あるといわれていますが、そのうち高品質ワインで注目されているのは50種類ほどです。チリでは34種類ほどの高級ワインの品種が栽培され、それぞれの品種別のヴァラエタルワインが作られています。
赤ワイン用品種
白ワイン用品種
Cabernet franc
Chardonnay
Cabernet sauvignon
Chenin blanc
Carignan
Marsanne
Carmenere
Moscatel de Alejandria
Cot / Malbec
Moscatel Rosada
Merlot
Pedro Jimenez
Mourvedre
Pinot blanc
Nebbiolo
Gewurztraminer
Petit verdot
Pinot gris
Petite Syrah
Riesling
Pinot noir
Roussanne
Portugais bleu
Sauvignon blanc
Sangiovese
Sauvignon gris
Syrah
Sauvignon vert
Tempranillo
Semillon
Verdot
Torontel
Zinfandel
Viognier
(写真左:カベルネの着色。葡萄の実が緑から青に着色するころ、収穫時期を見据えた準備が始まる)
(写真中央:完全に着色が完了し、どんどん熟しているカベルネの実。)
(写真右:ほぼ完熟したカベルネ。後は、ワインメーカーが決める収穫のタイミングで、この葡萄から作られるワインの品質が決定する。)
チリの全土で作付けられており、赤ワイン用品種の45%強を占めるのが、カベルネ・ソービニョンです。 カベルネ・ソービニョンは味わい深いタンニン、芯の通った酸、ジューシーでふくよかな果実味等、はっきりしたキャラクターとしっかりとした骨格があるため、長期熟成型ワインに向いています。 ボルドーをはじめ、世界中の高級ワインで使われています。また長期熟成に欠かせない樽熟成による樽香の影響に対しても、十分に耐えて共存できる力を持っています。
チリのカベルネソービニョンの高い品質は世界でも認められており、世界中にファンをたくさん作っており、また、数々のワインコンクールでさまざまな賞を受賞しています。日本の90年代後半のワインブームの際には、"チリカベ"として不動の地位を築きました。世界のカベルネ・ソービニョンを飲み比べるなんてことも面白いワインの楽しみ方ですね。
オーストラリアや米国、フランスのローヌ地方で有名なシラー(別名シラーズ)についても、近年急速にチリの産地が注目されるようになって来ました。
”チリのカベルネ”の世界的な成功の後、シラー作りに精通した世界各国のワインメーカーがチリを訪れ、シラーにとても適した場所を発見し、本格的なシラー作りを開始したためです。
今日では、チリのシラーは特にイギリスなどのワイン評論家らによって、とても高い評価を受けており、今後がとても楽しみな品種です。カベルネのようなヴォリューム感がありながら、より果実の甘みとスムーズなタンニンが人気です。また、人目で分かる赤るい美しい深いルビー色が特徴的です
カルムネールと読まれることが多いですが、チリ人はカルメネールと呼んでいます。世界ではチリとイタリアと中国にしかないと言われる希少な品種です。 カルメネールとは他の赤ワイン品種に比べて、収穫時期が2、3週間遅い晩熟の葡萄です。ゆっくりゆっくり熟し、ブドウの葉が深紅色になったころが収穫のサインであると言われています。 この収穫時期の美しい葉の色、カルミネ(深紅色)が語源とされております。カルメネールはフランスのボルドー原産の品種で、現在世界で自根で育っているのはチリのみと言われています。
カベルネとのアサンブラーヘ(ブレンド)により、チリのプレミアムワインをユニークにさせ、影で支える重要な品種でもあり、「ボルドーブレンド」に対抗する、「チリブレンド」という言葉も普及しつつあります。 また、ヴァラエタルワインにおいては、カベルネソービニョンよりも口当たりがやさしく、適度な酸味がある、スムーズなワインになります。若々しいものから濃厚なものまで、現在いろいろなタイプのカルメネールのワインが作られています。
写真上:収穫時のカルメネール。葉が深紅色で美しい
写真左 :カルメネールの葉と葡萄の房 写真右:一部大手ワイナリーは、カルメネールだけのプレミアムワイン作りにも挑戦している。 写真はチリエノロゴ協会のカルメネールプロモーションロゴ http://www.carmenerealmundo.cl/eng/index.html
写真上:推定樹齢100年のパイス。無灌漑、無農薬の農地にて
写真上:樹齢100年のパイスの古株。こうした古株は、たった1つか2つの房しかつけないものの、とても濃縮された果実になっている
チリに最初に持ち込まれたワイン用葡萄はパイスと呼ばれています。 別名、ミッショネーラとも呼ばれ、スペイン入植者(ミッショネーロス)が持ち込んだのでこう呼ばれています。
400年前にチリのマウレ地方に栽培された後、全国のカトリック教の宣教活動に必要であったことから全土に植え付けられ、今日ではチリのすべてのワイン生産地での栽培が確認されています。
今もチリの大手ワイナリーの大量のワイン生産を支える重要な品種であり、チリにおけるワイン用葡萄栽培量の2位が実はこのセパージュです。 香りと味わいではカベルネなどに比べて見劣りするものの、100年以上の古株から取れる葡萄を使ったワインは、驚くほどの濃縮感があり、今後チリでさらに注目されるべき可能性をもった品種です。
400年かけて、チリ全土に植えつけられたパイスは自然によって淘汰され、古株が生き残っている南部の一部地方のパイスは、完全無農薬により100年以上も栽培されていると言われています。
100年以上たっていても高さ50cmぐらいにしか達しないものの、その幹は恐ろしいほどの風格を見せ、一年に1房か2房しかつけないものもある、極めて貴重なチリの遺産的な品種といえます。今後このパイスを使ったプレミアムワインがお目見えする日が来るかも知れません。
写真左:樹齢100年の古株から作られたパイス100%のワイン。 こうした輸出用高級パイス種のワインも少しずつ作られ始めている
チリでもっとも多く栽培されている白ワイン用のセパージュはシャルドネではなく、実はソービニョン・ブランです。
チリは赤ワインの国というイメージが強いかもしれませんが、白ワインになるソービニョンブランやシャルドネの一大生産地として、世界的にも実はもっと注目されるべきでしょう。
特に、チリのソービニョンブランは世界でもユニークです。
チリのソービニョン・ブランは昔から栽培されているセントラルバレーなどでは、80%近い作付け面積において、ソービニョン・バートとの混植であると考えられております。チリのソービニョン・バートは、カリフォルニアにあるソービニョナーゼと呼ばれる品種や、イタリアのトカイ・フリアーノという品種に近い品種と言われています。
しかしチリでは、ソービニョン・ブランとソービニョン・バートを区別はしていなかったため長くソービニョン・ブランとして出荷されてきました。そのためか、チリのセントラルバレーのソービニョンブランは、今でも若干ソービニョン・バートによる特徴も感じられるものもあり、そのようなソービニョンブランは、作りたてのフレッシュな時に最大の飲み頃を迎えます。このソービニョン・ブランは溌剌として勢いがあり、圧倒されるほどのトロピカルフルーツ万才の華やかでリッチなアロマティックなワインになるものが多いです。
一方で、新興産地の、カサブランカバレーやサンアントニオバレーなどでは、最初から正しく選定されたソービニョン・ブランをクローンまで選定して使っているため、柑橘系や植物系の香りとミネラル感、切れ上がる酸が特徴的で、さらには、瓶内熟成するタイプの高級ソービニョン・ブランも生産されています。
フレッシュなソービニョンブランは、夏の暑い日にビールの代わりに是非お勧めしたいすばらしい品種です。是非、その年に作られた、出来立てのフレッシュなソービニョンブランをまず一度お試しいただきたいと思います。
チリの地形
チリの地方性は大きく分けて4種類あります。
チリの国土の長さは4200kmに及び、その長い国土に広がるワイン生産地は南北では1000km以上 にも伸びています。
そして、ワイン生産に影響するチリの地方性は大きく次の4種類に分かれます。
(チリのワインリージョンは南北に切られていますが、実は狭い東西影響のほうがワインに多様性を与えていることが最近では分かってきています。 )
北部(アタカマ砂漠近郊) と南部(パタゴニア) 、そして、東部(アンデス山脈側) 、西側(海岸側) です。
なお、この南北の距離”1000km”は、カリフォルニア南部のワイン生産地セントラルコースから、北部オレゴンワインの生産地ポートランドに相当する距離であり、イタリアでいうと北部のピエモンテからシチリア島までの距離に相当します。
国を超えて、フランスのボルドーからイタリアのピエモンテでさえ、750kmぐらいしか離れておりません。
(左の図をご覧ください。各国の縮尺は同じものです。1000kmのワイン生産地がどれだけ長いか驚かれることでしょう!!)
これだけ広い土地、多様な気候と地理的特徴、そして、各地域の特徴を生かした葡萄造りが行われるため、チリで造られるワインを一言で"チリワイン"とくくれないゆえんががここにあります。
特に近年、チリ国内では適材適所、適したセパージュを適した土地で、と発想でワイン用葡萄の栽培がどんどん新しい地で試されており、ニューフロンティアが次々と開拓されてきています。この生産地域がますます長くなっているということです。
なお、チリの東西の多様性は、南北以上に複雑です。チリは細長く、平均して170kmの幅しかありません。この幅で、海から10km程度のところで、ピノノワールやソービニョンブランなどの冷涼な品種が主体で作られている地域があり、そこから、わずか70km東の山脈側では、温暖な地方に適するカベルネが作られる地域があるのは、世界でも稀です。
東西方向には極端に狭いチリでこのように気候が多様である理由は、太平洋の海流とアンデス山脈の影響なしには語れないのですが、また別の項目にてごらんいただくことにしましょう。
(等尺図で世界各国のワイン生産地を比較するとチリワイン生産地は、極めて広く、広範囲の緯度に広がっていることが分かる)
ワイナリーとワインメーカー
世界有数の大手ワイナリーが10社強存在しており、大規模な生産を行っているものの、広大なヴィンヤードの管理や収穫などの作業は基本的にすべて人手に頼っています。こうしたワイナリーには、100年以上の歴史を持つワイナリーが多く、その、ヴィンヤードや蔵などは国の登録遺産になって伝統のある風格を残しています。
チリの大ワイナリーはテーブルワインから、ウルトラプレミアムワインまで、縦方向に何段階にも層のあるブランドがあり、それぞれのブランドにはさらに何種類ものセパージュでワインを造るという横の広がりを持たせています。このように一つのワイナリーで作られるのが何十種類にもなるため、それぞれのワインには、品種や、作り手に独特の個性が求められるだけでなく、毎年品質を保持する必要があります。
こうしたワイン作りには最高水準のワインメーカーの実力が求められ、チリの大手ワイナリーで働くワインメーカーは、地味で表舞台にでることは少ないものの、世界のワイン業界の中認められている、ワイン作りの実力を持った人たちが多く存在しています。
大手ワイナリーのワインの楽しみ方としては、毎年、どこで買っても同じ高い安心感のある品質が保証されているということ、セパージュの違いをはっきりと理解できる水平方向の飲み比べや、ヴァラエタルとレゼルバの違いなどの垂直方向の飲み比べができるところにあります。
そしてもちろん、大手ワイナリーのウルトラプレミアムワインはチリで最上級のヴィンヤードから、そのワイナリーの全資産、ノウハウをかけて作られる世界最高水準の文字通りウルトラプレミアムなワインとして世界のワインコンクールなどでも高い評価を得ています。
チリの中規模ワイナリーは50前後と言われ、2種類のタイプがあります。一つはフレッシュ&ヴァラエタルワインを主体にして作っているワイナリーと、レゼルバワインを主体に作っているワイナリーです。
多くは一つの地方にヴィンヤードを持ち、そこに複数の品種を作付けしています。特にフレッシュ&ヴァラエタルワインを主体にしたワイナリーは、大ワイナリーよりも丁寧に葡萄を作り、キャラクターがよりはっきりしたタイプのワインを作っています。また、いろいろな地方にある中規模ワイナリーの同じセパージュのワインを飲み比べて、地方性を比較することも楽しみ方の一つです。さらに、オーガニック栽培などに力を入れているワイナリーが多いのもこのクラスです。
このクラスのワイナリーのプレミアムワインは、大手のワイナリーの脅威となっており、今チリで一番注目するべきワイナリーたちが集まっています。
小ワイナリーはレゼルバやプレミアムワインが多く、生産量も少なく、すぐに売り切れになります。生産者のカリスマ性や特異性が話題になることも多く、小さいながらも特等葡萄畑の個性がストレートに、かつ強烈に表現されているワインは、世界のワイン業界を唸らせ、注目を集めています。
チリワインは現在若いエノロゴ(ワインメーカー)の台頭が著しい国です。若いエノロゴや、女性のエノロガの溌剌としたワイン、ニューコンセプトのワイン造りへの意欲がチリワインをますます元気にしています。 若い方に人気がある由縁かもしれません。 注目の35歳以下の注目エノロゴ、エノロガと勤務するワイナリー
・ Tamara Baeremaecker: Concha y Toro
・ Jose Ignacio Cancino: Vina la Rosa
・ Ana Maria Cumsille: Altair
・ Ceciliza Guzman: Haras de Pirque
・ Adolfo Hurtado: ConoSur
・ Jose Pablo Martin: Chocalan
・ Macarena Morande: Vina Morande
・ Gonzalo Perez: Anakena
・ Marco Puyo: Los Vascos
・ Andres Sanches: Guillmore
・ Rodrigo Soto: Matetic
・ Enrique & Rafael Tirado : Concha y Toro, Veramonte
・ Constanza Vicent: ConoSur
チリは女性ワインメーカーの進出も顕著です。女性の優れた感性がワインに現れていることも分かります。チリの大手ワイナリーのもっとも重要な醸造責任者や醸造責任者を兼ねたオーナーなど、日本にはまだまだ紹介されていない女性の、女性による、女性のためのワインが数多く存在します。
・Marilu Marin : Casa Marin
・Irine Paiva:Caliterra, SanPedro, Tabali
(写真左)
・Cecilia Torres : Santarita
・Maria Pilar del Gonzalez : Carmen
・Ana Maria Cumsille : Altair
(写真右)
・Adriana Cerda : Lagar de Bezana
・Maria Elena Quezada: vina Mar
・Macarena Morande: Morande
・Constanza Vicent : Conosur
・Matias Rivera : Cousino Macul
・Eugenia Dias : Canata
・Carolina Armello : VOE
・Paula Cardenaz: William Cole
(写真中央)
チリはワイン生産における世界でもポテンシャルの高い国であるということが、多数のワイン関連外資やリキュール界のチリへの進出によって確認できます。こんなに多くの有名なワイン関連外資が集中するニューワールドのワイン生産国は他にありません。
ボルドー組:
ラフィット:Los Bascos
ムートン:Escudo Rojo, Almaviva
ジャック&フランソワ・リュルトン:JF Lurton
ダッソー:Altair
ボンタリエ:Aquitania
ブルゴーニュ組:
ミシェルラロッシュ:Laroche Chile Rio Azul
ボワセ: Veranda
ウィリアム・フェーブル: William Febre
その他フランス:
ティエリ・ヴィラール:Villard
シャトー・デ・ラローズ: Casas del Toqui
スペイン:
ミゲルトーレス:Miguel Torres
ボデガス イ ベビダス: Selentia
イタリア:
アンティノリ:Haras de Pirque
チンザノ:Reserva de Caliboro
カリフォルニア:
ロバートモンダビ:Sena, Caliterra
コンスタレーション:Veramonte
ケンドール・ジャクソン:Calina
ガロ:Bisquertt
オーストラリア
リキュール:
マスネ: Los Boldos
ラポストル:Casa Lapostolle
チリのポテンシャルに魅せられて、たくさんの有名なワインメーカーもチリでワインを造ったり、移住して来ています。
France Enologist:
JeanPascalLacaze: Quebrada de macul
Michel Friou: Baron Philippe Rothschild Maipo
Ives Pauzet : Torreon de Paredes
Philippe Debrus :Botalcura
Pascal Marty :
California :
Tod Mostero :Almaviva
Edward Flaherty :VIA
Thomas Evans :Gracia
NewZeland
DJ GrantPhelps :ViuManent
Brett Jackson :Sanpedro
UK
German
Goetz von Gersdorff:Concha y Toro
Flying Wine Makers
Michel Rolland: CasaLapostolle
Pascal Chatonnet
Patrick Vallet
Jacques Boissenot: Don Melchor
Christian Le Sommer:Baron Philippe Rothschild Maipo
Paul Hobbs : Carmen
Grez La Follette: Casa Marin
チリ人ワインメーカー@世界
チリのワインメーカーは、チリ国内で忙しいのですが、世界有数のワイナリーで働くワインメーカーもおります。
Cesar Baeza:Brotherhood Winery (NewYork州)
カルメネールの評価、栽培技術の向上に多大な貢献をしてきたフィリッポ・シュカウスキー(Philippo Pszczolkowski)教授
フランスのボルドー大学や、カリフォルニア大学ディビス校で学んだ、酵母の権威エドムンド・ボルドー(Edmundo Bordeu)教授
OIV会長を勤めたこともある、アレハンドロ・エルナンデス(Alejandro Hernandez)名誉教授
高品質なワイン作りは、良い葡萄栽培とそれを生かす醸造技術が必要です。 高品質ワイン造りにおいて、葡萄栽培の技術とノウハウは、醸造技術以上に重要なものであると考えられているため、チリのワイン醸造学部は農学部の中に設置されています。なかでも、チリカトリカ大学醸造学部はフランスのボルドー大学と提携しており、栽培学に長けたすばらしい醸造家たちを輩出しています。
チリで「エノロゴ」と呼ばれるワインメーカーたちは、ブドウ栽培に積極的に関与し、理想的な葡萄を収穫し、その葡萄から理論的に作れるであろう最高品質のワインを予想しながら、いかにその理論的な品質に近づけるかを日々考えながらワイン造りに励んでいます。
どんな良い葡萄を持ってきても、悪いワインメーカーでは、良いワインはできません。しかしながら、どんなに素晴らしいワインメーカーをもってしても、良い葡萄でなければ醸造技術は葡萄の欠陥を補正するだけで、良いワインは造られません。葡萄の出来でワインの品質はほぼ決定付けられてしまうといっても過言ではありません。
その他のチリ情報
チリは実はオーガニック栽培の天国です。オーガニックワイン作りは、オーガニック葡萄栽培のことを基本的にさしています。
葡萄はそもそも、樹盛の強い木であり、したがって、やせた土地でも元気良く育ち、化学肥料を使うような必要性はありませんし、チリの夏はとても乾燥しているため、収穫に近いころに、湿度によるカビや菌による汚染を防ぐ防腐剤も必要としない、とても、衛生的な葡萄栽培ができる場所なのです。 また世界中で恐れられている葡萄の根につく寄生虫フィロキセラがチリには存在しないことから、自根栽培が基本だということも特筆できます。 フィロクセラの害虫被害に合った世界中のワイン生産国では接木栽培が一般的で、100%純粋な品種からワインを造るのはなかなか難しいのが現状です。
さて、チリではもともとほぼオーガニック栽培をしていた生産者たちですが、近年までオーガニック栽培の認証を受けるという概念が存在していませんでした。 しかし現在では、国際的なオーガニック栽培の認証を受けるために、より厳格な栽培管理を行い、世界基準の認証を受けられるオーガニック栽培に切り替えたり、自然のエネルギーを最大限に活用するビオデナミ農法を採用する生産者も現れております。 写真右:チリのオーガニック、ビオワインのカリスマ。アルバロ・エスピノーサ 写真左:アルバロ・エスピノーサのワイナリー風景。
チリワインの場合、ほとんどの葡萄が手で摘まれています。
良質なワイン作りには良質な葡萄の確保が必要なことは言わずもがなですが、土でも虫でも不良果でもなんでもかんでも"収穫"してしまう機械収穫機よりも、丁寧に人の手によって収穫することは良質なワイン作りには欠かせません。
しかし人件費が高いため、多くのワイン生産国では、葡萄の手摘みは高級ワインでのみ行われます。
しかしチリでは2003年時点で、機械収穫機は数台しかチリに存在せず、したがって、機械摘みということ自体がめずらしく、機械をリースして収穫するほうがコストが高いという現実があります。 チリの手摘みは当たり前であり、この点でも世界のほかのワイン生産国に比べて、生産コストを抑えて品質の高さを維持できる理由でもあります。 手摘みはこれに特化した移動性季節労働者が、収穫時に葡萄の房を選定しながら収穫するため、醸造場に入る前の畑ですでに一回、人間の目による健康果の選定が行われているのです。 なお、この収穫のためにたくさんの労働者が雇われており、北部から南部へ移動する収穫前線と一緒に、こうした労働者は畑から隣の畑へと収穫を行いながら、ハーベストを追いかけて大移動を行います。
チリワインはアロマティックなワインです。
この最大の理由としては、まず、果実香の成分に富んだ葡萄栽培ができる気候があり、その果実香を最大限に引き出せるステンレスタンクを使った低温発酵や醸造法を積極的に採用していることにあります。第二に葡萄が健康的に完熟することが出来る気候であることから、果実香を覆うような過剰な樽熟成を必要としないことも挙げられます。
チリは3Wの国と呼ばれています。 すばらしい気候(Weather)、すばらしい女性(Women)、そしてすばらしいワイン(Wine)。
チリワインは他のワイン生産国よりもポリフェノールが多く含まれていることで有名です。フィンランドのグラスゴー大学の研究チームは、世界各国のワインに含まれるポリフェノール成分(フラボノイド)を計測し、チリワインに含まれるものが、他国のものよりも多いことを発見しました。
葡萄にとって、ポリフェノールとは、果実を紫外線から守るという役目をもっており、チリの晴天による強い直射日光から守るため、その成分がたくさん含まれていると考えられます。 まさにワイン生産地としては標高が高く、空気が冴え渡るチリの、ふんだんな日の光の恵みである葡萄が、与えてくれている天の恩恵といえるかもしれません。
日本におけるチリワインの輸入量は2005年で80万ケースです。11月の数週間の大イベントのためだけに輸入されるフランスのボジョレーヌーボーは80万ケースを超えています。
チリワインに対してよく言われる、安くて美味しいは間違いです。安いワインの中で美味しいのではなく、世界のすばらしい色々なワインと比べても美味しい、しかも、安い、値ごろ感がある、が正しいのです。
世界のコンテストで認められているチリのプレミアムワインが、それを証明しています。
これからは、おいしくて値ごろ感のあるチリワインがオススメです!!