8日目午後
午前中はヴィンヤードを見せてもらい、午後はカリボロを訪れた別の一団と、エラスモの垂直テイスティングに参加させてもらえることに。この一団は、スペインの有名なワイン評論家と、有名なワインプロデューサー兼コンサルタントと、エノロガだということ。
もしかしてあたしじゃなくて日本のワイン関係者だったら、ものすごい機会に恵まれてしまったのかもしれないけど、、、、当然私は存じ上げませんでした。そしていかにせんあたしなので肩身がせまい。
ただ、救われたのは、一堂完全にスペイン語だったこと<弱
そんなわけで、わからなくても ニコニコしてるだけでなんとなく許されていると信じたいフナヨでした。
(いや許してください。ほんとに。勘弁してください)
とにかくカリボロについて自分のスペイン語力の無さに神経をすり減らしていたところで、このテイスティングルームにいるだけでもかなり胃が痛かったのですが、いずれにしても、とにかくめちゃくちゃ早いスペイン語で全く理解不能。しかもほとんど専門用語ばっかりだし。
ただ、ようやくいくつか聞き取れた限りでは
「スペイン軍団が今チリに物凄く注目していて、今回はマウレだけでなく、コルチャグアやマイポも回って試飲してきているが、マウレが非常にポテンシャルがあると感じている」ということと
「どこかで行なったブラインドテイスティングで アルマヴィヴァより クロアパルタより、この評論家はエラスモを評価した」ということと
「スペイン軍団がニンケンが非常にお気に召している」ということと
それから
「スペイン人はどこにでもテンプラリーニョを植えたがる」
ということだけは聞き取れました。
垂直テイスティングの結果で、評論家が エラスモ04と05について絶賛している、というのは
彼がものすごい身振り手振りで話していて、そのたびにガブリエルが嬉しそうに相槌を打っているのでわかったのですが。
さて、エラスモの垂直試飲ですが、まず最初に、これはわたしの初めてのエラスモの垂直試飲でした。
試飲したのは2001/2003/2004/2005の4ビンテージでした。
うちで今売っているのは04なので、04は何度も飲んだことがあるのですが、それ以外のビンテージは全て始めて口に入れるものでした。(もちろん店長は全て試飲済み)
なのでシンプルな感想しかかけませんが、チリは毎年晴れなので、ビンテージの差が出にくいと聞いていたのに、想定していたよりかなりビンテージの差と熟成による違いがはっきり感じられ、驚きました。
まず2001,2003は同じ線上にあって、04と05は全く別物だと思いました。
01は既に枯れた花のような熟成感が出ていて、柔らかで優しい味わいでした。
03は少しキャラクターが弱く、2年たってもおそらく01のようにはならないのでは、と思いました。
04は良く知っているエラスモでした
05は04よりもさらに濃く、固く、まだ閉じていました。すごいワインになることが予想されました。
私はそれまで04のエラスモをとても美味しいと思っていました。
でもこうして飲むと04は強くしっかりとしたワインとして美味しいのですが、01のエラスモの優しさや複雑な香りがなんとも上品で、個人的には好ましくかんじました。
バローロやブルゴーニュに感じるような、かすかですな複雑さの片鱗がありました。
なので、ガブリエルに
「マダムどれが一番好きですか?」
と聞かれた時、あたしは
「今飲むなら01が一番好きかもしれないです」
と正直に答えました。
するとガブリエルもにっこり笑って
「僕も今飲むなら01は美味しいと思います。03はあまりいいビンテージじゃなかったのですが、でも04は01より更に長命で、良い熟成を遂げると僕たちは期待しています。そして05は更に偉大なビンテージになると僕らは期待しているのですが、今飲むのは少しもったいないですね」
といいました。
あたしはすっかり上機嫌になって、自分のために04のエラスモを2箱はキープして熟成させようと心に決めました。
スペイン軍団が帰ったあと、私はガブリエルと、セサルと一緒に、畑に晩御飯のジャガイモを掘りにいきました。
カリボロでは自給自足なので、そこではワイナリーの人が総出でジャガイモを掘っていました。
ジャガイモ、トウモロコシ、ビーツ、たまねぎ、にんじん、ポロ葱など
日本のように緑豊かのようには見えない赤茶けた大地からの作物は、驚くほど豊かでした。
その日はセサルとガブリエルと夕飯を食べながら二人に色々なことを聞きました。
ワインのこと、カリボロのこと、そしてエラスモのこと。
中でもセサルと伯爵との出会いの話はとても印象的でした。
チリでワイナリーを興すことを決めて、場所を見つけた伯爵が、ビンヤードを任せる人を探していたとき尋ねたのが農業技師のための大学で、そこで優秀な成績だったセサルが校長に推薦されたのが二人の出会い。
でもそのときには葡萄の経験が少なかったセサルを、イタリアのブルネロ・ディ・モンタルチーノ・コルドルチャに送り込んで研修を受けさせたのだそうです。
そんなことはとても珍しいのでしょう?ラッキーだったのではないですか?と私がセサルに聞くと
「コンテもね(僕のような優秀な人間と出会えて)」と言ってセサルとガブリエルは笑っていました。
それからエラスモは少しビオデナミの要素も取り入れていて、例えばビオデナミで使われるようなカモミールやたんぽぽなどの雑草や薬草や鉱物などの自然の物質から作った調合材(プレパラシオン)の散布も試験的に試したりしているのだそう。
セサルは特にカモミールはいいかんじがする、まだ色々試しているレベルだけどと言い、それらで使うものはカリボロの畑から取れたものを使うことが大切なんだ、と言いました。
ビンヤードのマネージメントについて、もっとも大切なことは?と聞くと、セサルは、とにかく葡萄畑を観察すること。カリボロの状態を知ることだと言っていました。最初の数年より今年のほうがよくわかるし、年々それは強くなっていく、と言っていました。
ワインメーカーのガブリエルには理想のワインメイキングについて質問しました。
ガブリエルはカリボロでの彼の理想のワインメイキングは、最高の葡萄をシンプルに醸造する、シンプルでイージーなワイン作りだと言いました。
エラスモは多くのプレミアムワインのように、一口飲んだときには偉大だと思われるけれども、1本飲んだら疲れてしまうようなワインではなくて、毎日飲んでも飲み飽きず、また飲みたくなるような、1本1本に感動があるようなワインを目指しているのだそうです。
そこで私は少し意地悪な質問をまたまたしてしまいまました。
「カリボロは、今日私見せてもらって、とても機材も小さいし物凄く醸造もシンプルなので、びっくりしたのですが、最近は重力システムのように、ポンプを使わないようなスタイルを採用するプレミアムワイナリーも多いですよね、それについてはどう思いますか?」
「ポンプを使わないでワインにストレスを与えないというのはワインの質を向上させるのに、有効な方法であるとは思います。」
「じゃあ、仮にカリボロに膨大な資金があって、なんでも取り入れられるから好きな機材を買っていいって言われたら、買う?」
「うーーん」
ガブリエルは少し考えて 君は面白いことを聞くねえ といいながら
「買わない。エラスモにはいらないから。僕は昔ながらのワインの作り方が好きなんだ」
「じゃあ、なんでも買っていいって言われたら何が欲しい??」
「うーーーん。選果台は買ってもいいかなとは思ってる。(笑 」
「じゃあ、もう一つ質問、もし膨大な資産があって、世界中のどこにでも畑を買えるとして、自分がいつか自分のワイナリーを持つとしたら、どこを買うと思う?チリじゃなくてもいいんですよ、世界中ですよ」
これにはまたガブリエルは ずいぶん長く考えて 君は本当に変な人だなあ、といいながら
「世界というのは難しいな。行った事がないところが多いし。コルチャグアもいいし、もちろんニンケンの丘も欲しい。(ニンケンの丘は伯爵も欲しかった場所。モングラのビンヤードがある)
でもこの近くにカウケネスという場所があって、今はまだそこは全然有名じゃないんだけど、最近ワイナリーがこぞってビンヤードを買っているところがあって、僕も実はそこはすごくいいと思っている。もしお金があったら僕はカウケネスに買うかもしれない。」とまじめに答えてくれました。
やっぱりガブリエルいい人だったなあ。(笑
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